神田川の上からJR御茶ノ水駅ホームの上空にバリアフリー化を目的とした駅の人工地盤となる「橋」を架ける工事が進行中です。6年以上にわたるこれまでの道のりを振り返ってみましょう。
<概要>
場所 : 東京都千代田区
発注者 : 東日本旅客鉄道
設計 : JRC・JRE・鹿島・大成設計共同企業体
工期 : 2012年9月~2025年3月(予定)
神田川側完成イメージ 出典:JR東日本プレスリリース
-バリアフリー化のため駅を全面改良-
1日の乗車客数が10万人を超えるJR御茶ノ水駅。通勤通学の利用客が少ない午後の時間帯でも多くの人であふれています。大学病院に通う人も利用する御茶ノ水駅ではバリアフリー整備が課題となっていました。
御茶ノ水駅は神田川とビル群、そして両脇の橋に囲まれた特殊な地形のため、工事が難しいとされてきましたが、JR東日本は2013年から工事用の桟橋を設けて改良工事に着手し、その第1段として今年1月に上下線のエスカレーターとエレベーターが使えるようになりました。
出典:未来へのレポート
異例の河川工事からスタート
ホームの台地側には商業ビルが立ち並び、工事ヤードを確保できない。そのため、線路と並行して流れる神田川の上に工事用の桟橋を仮設することから始まりました。
桟橋は川幅の約半分を占める幅22m、長さ120m、高さ15mの大規模なもの。川の流れを阻害するので通常は渇水期の年間6ヶ月程度しか設置できません。桟橋は設置だけでも半年かかり、毎年設置と撤去を繰り返していては工事が進まない。
そこで、川の流下能力を確保するべく、2ヶ月かけて現地から約1km上流まで川底を浚渫しました。桟橋を設置した状態でも川が氾濫しないようにすることで、年間を通じて桟橋を設置する許可を得たのです。
施工条件の難しさ
御茶ノ水駅構内では、駅改良工事だけでなく、石積み擁壁の耐震補強や、鉄道の真上に架かる箇所を対象とする聖橋の長寿命化、お茶の水橋の耐震化といった工事も同時に進められている。2つの橋はともに関東大震災の復興橋として建設されてから約90年経つ歴史ある橋です。
複数の工事を同時に進めるため、夜間工事ではどの路線でどのような作業をするのか、工事間で日々の調整が必要となりました。
またホーム上に工事用の仮囲いを設ける期間を極力短くするため、エスカレーターを人工地盤の上で組み立てて、一夜にしてホームへ吊り下ろすという特殊な方法もこの工事の特徴です。
聖橋方面から見た御茶ノ水駅工事の様子 出典:東洋経済
-聖橋口駅前広場機能の整備-
駅のバリアフリー整備に合わせて、千代田区と連携して聖橋口駅前広場の整備も進めています。
新たに整備される駅前広場は約500㎡で、駅舎も現在の茗渓通り側から聖橋側(人口地盤上)に移設されます。
現在、駅改良工事は1期の段階で、聖橋口側にある跨線橋の手前まで人工地盤の構築が完了しています。2019年中に聖橋口の改札を仮駅舎に移設する計画で、そこから2期が本格的に始まり、御茶ノ水駅が大きく生まれ変わる2023年ごろまで神田川を舞台にした工事は続くそうです。待ちに待ったバリアフリー化問題が解決し、今後も注目ですね。