「都市再生プロジェクト」が新たに動き出した東京駅前の八重洲エリアは、2022年以降大きく変貌します。東京駅八重洲口前に並ぶ3地区には、それぞれ複合超高層ビルが建ち、交通結節機能を強化するバスターミナル、小学校や子育て支援施設も整備される予定です。そんな画期的なプロジェクトについて詳しくみていきましょう。
八重洲という まち について
現在、東京駅八重洲口から出て眼前に広がる八重洲エリアは、江戸時代は外堀(現在の外堀通り)の城外側の町人地でした。更地の多かった丸の内とは異なり、昭和になっても大きなオフィスビルを建てることは困難で、八重洲に大規模なオフィスビルが建ち始めたのは戦後のことです。八重洲には現在も約70世帯・約100人が住んでおり、純然なオフィス街ではなく、住宅のあるまちでもあるのです。大規模オフィスビルが竣工約40~50年と老朽化を迎え、東京駅前でありながら細分化した敷地が残り、防災性が低下していた八重洲に、再開発の機運が高まってきたのは2000年前後からです。
再開発に向けた構想を含む4プロジェクト全てが竣工すれば、八重洲側も超高層オフィスが整然と並ぶ丸の内同様の景観になるでしょう。
東京都庁屋上からみた東京駅と八重洲口方面のビル群(1963年1月ごろ撮影) 出典:朝日新聞デジタル
八重洲二丁目1地区
八重洲二丁目1地区は、施工区域面積約1.5haに、2つのビルを開発します。1つは、地下4階・地上45階建ての超高層ビルです。もう1つのビルは、地下2階、地上7階のビルで、子育て支援施設や事務所、店舗、駐輪場、駐車場、そして住宅から構成されます。
こちらでは、前者の超高層ビルについて詳しくみていきましょう。
《概要》
計画名称 | : 八重洲二丁目北地区第一種市街地再開発事業新築工事 A-1街区 |
所在地 | : 東京都中央区八重洲二丁目2番の一部および3番 |
主要用途 | : 事務所、店舗、ホテル(ブルガリ ホテル 東京)、小学校、バスターミナル、駐車場等 |
階数 | : 地上45階、塔屋2階、地下4階 |
高さ | : 240m(最高240m) |
構造 | : S造一部SRC、RC造 |
基礎工法 | : パイルド・ラフト基礎(直接基礎と杭基礎の複合基礎) |
敷地面積 | : 12,390.43㎡ |
建築面積 | : 10,875.16㎡ |
延床面積 | : 283,896.06㎡ |
建築主 | : 八重洲二丁目北地区市街地再開発組合(事業協力者:三井不動産㈱) |
設計者 | : ㈱日本設計 |
施工者 | : ㈱竹中工務店 |
工期 | : 2018年12月1日着工~2022年8月下旬竣工予定 |
出典:三井不動産㈱
《日本初!超高層ビルに小学校》
八重洲二丁目1地区の超高層ビルの特色は、地権者である中央区の公立小学校が入ることです。中央区によると、低層部とはいえ、超高層ビルに小学校が入居するのは日本初とのことです。
《大規模バスターミナル》
地下2階には約5,000㎡規模のバスターミナルが整備されます。「八重洲一丁目6地区」と「八重洲二丁目中地区」に整備されるバスタミナールとの連携をし、空港直結バスや都市間高速バスの発着するバスターミナルとなる予定です。
出典:三井不動産㈱
《エネルギーセンターの設置》
北地区には、ガスや重油などを燃焼させて、タービンを動かすことで電気と熱を供給することのできる装置「コージェネレーションシステム」が設置予定です。これにより、環境負荷の低減につながるだけでなく、災害時においても信頼性が高い中圧ガスにより発電するため、必要な電気の供給を受けることが可能になります。また、備蓄用倉庫や災害用トイレも整備し、災害時における帰宅困難者のフォロー体制を整備します。
出典:三井不動産㈱
八重洲一丁目6地区
八重洲一丁目6地区は、A・Bの2街区に分かれ、街区面積の大きいB街区で超高層ビルの開発が行われます。こちらではB街区について詳しくみていきましょう。
《概要》
計画名称 | : 東京駅前八重洲一丁目東B地区第一種市街地再開発事業 |
所在地 | : 東京都中央区八重洲一丁目地内 |
主要用途 | : 店舗、事務所、住宅、バスターミナル、カンファレンス施設、医療施設 等 |
階数 | : 地上50階、地下4階 |
高さ | : 約250m |
地区面積 | : 約1.3ha |
延床面積 | : 約229,750㎡ |
工期 | : 2021年度着工~2025年度竣工予定 |
総事業費 | : 約2104億円 |
出典:東京都
《ライフサイエンスビジネス拠点と医療施設》
八重洲一丁目6地区では、日本橋地域で展開されているライフサイエンスビジネスの集積・発展に資するようなカンファレンス施設を設備し、日本の産業力・国際競争力を強化します。更に、高度医療機関と連携した初期医療施設を設置し、外国人就業者やその家族が安心して日本で働き暮らせる環境を整備します。
八重洲仲通り・さくら通り沿いの低層部イメージ 出典:東京建物㈱
八重洲二丁目中地区
《概要》
計画名称 | : (仮称)八重洲二丁目中地区第一種市街地再開発事業 |
所在地 | : 東京都中央区八重洲2丁目4番、5番、6番及び7番 |
主要用途 | : 事務所、店舗、居住・滞在施設、インターナショナルスクール、バスターミナル、駐車場など |
階数 | : 地上46階、塔屋1階、地下4階 |
高さ | : 約240m |
構造 | : S・SRC造 |
敷地面積 | : 約19,500㎡ |
建築面積 | : 約15,700㎡ |
延床面積 | : 約418,000㎡ |
建築主 | : 八重洲二丁目中地区再開発組合(予定)(事業協力者:三井不動産㈱、鹿島建設㈱、ヒューリック㈱) |
コンサルタント | : 日建設計 |
工期 | : 2022年度着工~2025年度竣工予定 |
※現在再開発組合の設立認可に向けて動いています。
出典:都市再生特別地区(八重洲二丁目中地区)都市計画(素案)の概要
《外国人ワーカーとその家族の生活環境充実》
八重洲二丁目中地区では、外国人居住を意識したサービスアパートメントとインターナショナルスクールを整備します。約7,700㎡の高水準の教育を提供するインターナショナルスクールでは、周辺の学校や施設と連携し、国際交流の機会を創出します。サービスアパートメントでは、整備するだけではなく、コンシェルジュ、フィットネス、ハウスキーピング、ランドリーなどのサービスも供給予定です。
再開発に向けた構想を含む4プロジェクトのうち、計画が決まっているものは3プロジェクトです。今回ご紹介させていただいた以外のプロジェクトにも今後も注目していきたいと思います!